歌姫Anita Bakerの2作目にしてブラック・コンテンポラリー・ミュージックの金字塔的なアルバム。80年代中期に湧き起こったクワイエット・ストーム旋風の立役者でもあり、都会のライトライフを彩るようなスムーズなサウンドは、Freddie Jacksonらとともに黒人の中産階級進出を象徴するものであった。彼女の代名詞となった①Sweet Loveに始まり、②You Bring Me Joy、③Caught Up In The Raptureまでの流れが完璧。某所のレビューで「大人の嗜みと憧れが交差した」作品と書かれているのも非常に納得で、ややジャジーなボーカルと艶やかで上品なサウンドは包容力に溢れ、単にBGMとしてだけでは終わらせない魅力を放っている。
Smooth Soul Sauce
Sunday, June 22, 2025
Anita Baker - Rapture (1986)
Sunday, June 15, 2025
Johnny Gill - Same (1990)
New Edition加入後の初ソロ作で通算3作目。何はともあれ、みんな大好きな⑥My, My, Myは、L.A. & Babyface制作によるの珠玉の90sバラードで、いつ何度聴いても飽きが来ない名曲。Kenny Gの甘美なサックスもこの曲をより一層洗練させている。これに続く⑦Lady Dujourの一転して少し影のある大人っぽい雰囲気もいい。⑨Giving My All To Youは、個人的に、90年代にしかない空気を感じられるスローで、いろいろと感情を揺さぶる。かと言って古臭さは感じさせない。Johnny Gillの円熟したボーカルは本当に上手い。
Sunday, May 18, 2025
Luther Vandross - Give Me The Reason (1986)
80年代中期のR&Bを代表する、端正で完成度の高い一枚。丁寧に構築されたアレンジとLutherの深みあるボーカルが、洗練された大人のソウルを描き出す。なかでも④So Amazingは、静かな高揚感を湛えたラブ・バラードの名演。余計な装飾を排し、歌そのものの力で聴かせる。⑥There's Nothing Better Than LoveはGregory Hinesとのデュエット。自然な掛け合いが心地よく、肩の力の抜けた温かさが印象的。過度に感情を煽ることなく、豊かさと余白を感じさせるアルバム。
Saturday, May 10, 2025
Roger - Unlimited! (1987)
Bruno Marsが24K Magicのイントロを耳にして最初に思い浮かんだのが①のI Want To Be Your Man。電子音を取り入れた80年代らしいスロージャムだが、トークボックスを全面に採用した独特でクリエイティブなサウンドで、いま聴いても不思議な魅力がある。本国で長く愛されるラジオ局Quiet Storm Radioでもヘビロテでプレイされる定番曲の一つ。
Sunday, May 4, 2025
Patrick Simmons - Arcade (1983)
Michael McDonaldと並ぶ、The Doobie Brothersの看板シンガー&ギタリストのソロ作。いかにもAORアルバムっぽいジャケットが気に入っているが、中身はややロック寄り。それでも、④Why You Givin' Upや⑨Sue Sadなど、AORらしいサウンドを楽しめる。そして本作にはなんと、The Chi-Litesのカバー曲Have You Seen Herが収録されている。原曲の明るく穏やかな雰囲気をそのまま生かし、柔らかいギターのアレンジも合っていて、良い感じ。
Monday, April 28, 2025
The Chi-Lites - Give More Power To The People (1971)
Listen (Have You Seen Her)
(Full Album)
前回の記事で紹介したEugene Recordを擁するシカゴの名ヴォーカル・グループChi-Litesの71年作。このアルバムの4曲目に収録されている甘茶ソウル・クラシックHave You Seen Herは、私が常に愛聴してきた一曲。グループの個性が光る、明るく晴れやかなコーラスがぐっと心を掴む。様々なアーティストにカバー&サンプリングされ、エヴァーグリーンな魅力を放つシカゴソウルの名曲。
Thursday, April 24, 2025
Eugene Record - The Eugene Record (1977)
前回に引き続き、春を感じるアルバム。こちらはシカゴのヴォーカルグループThe Chi-Litesのリードシンガー、Eugene Recordによるソウルの傑作。全体を通してのどかな雰囲気。特に、4曲目Overdose Of Joyの解き放たれたような爽快なメロウグルーヴや、6曲目Mother Of Loveでは甘く切ないエレキシタールのイントロから繋がる、ソフト&スウィートなヴォーカルが味わい深い。8曲目は美しいピアノとEugene Recordのハイトーンボイスがよく合う夢心地のバラード名曲。
Sunday, April 13, 2025
Marc Jordan - Mannequin (1978)
春の暖かなのどかさを感じるAOR作品。スティーリー・ダンに通じる洒落たメロディと上品な演奏とともに、アルバム全体で感じられるゆるさがとても心地よい。冒頭のSurvivalからJungle Choirの流れが最高。そしてセンチメンタルな歌詞に強さと優しさが同居する5曲目のRed Desertも良い。参加ミュージシャンも豪華で、David FosterやTOTOのメンバーが入っているのも嬉しい。
Sunday, April 6, 2025
PJ Morton - Gumbo Unplugged (2018)
2012年にMaroon 5に鍵盤奏者として加入したPJ Mortonによるライヴ作品。2017年にグラミー賞2部門にノミネートされた自身のアルバム"Gumbo"から曲順を変えて、NYの名レコーディング・スタジオにて一発録りをしたもの。元々ライヴ・アルバムはあまり積極的に聴くほうではなかったが、このアルバムに収録されているBee Geesのカバー曲How Deep Is Your Loveを聞いて考え方が変わった。余計な力を抜いてメンバー全体で音を楽しむリラックス感はライヴ・セッションならではで、とにかく美しく格好良いサウンド。2017年のアルバム版よりもこちらのアコースティック・アレンジのほうが好みかも。Ed Sheeranとの共演の経験もあるYebbaもデュエットで素晴らしいボーカルを披露している。
Monday, February 24, 2025
Bruno Mars - 24K Magic (2016)
80年代後半から90年代のファンク、R&B、ニュー・ジャック・スウィングの影響を色濃く受けた、華やかでノスタルジックなサウンドが特徴のアルバム。5曲目の甘く官能的なバラードVersace On The Floorは、こちらの記事で紹介したような80年代後期のハッシュ・サウンドを彷彿とさせる。歌詞も"Rock Me Tonight"そのままの世界観。key.には80年代の売れっ子鍵盤奏者Greg Phillinganesを起用するこだわりよう。こういうサウンドを掘り起こして現代にも通用すると示したことこそ、Brunoの功績だと思っている。
Saturday, February 22, 2025
Freddie Jackson - Rock Me Tonight (1985)
Bruno Marsの"24K Magic"に収められているVersace On The Floorというバラードのモチーフになったとも言われるのが、このFreddie Jacksonのデビュー作に収録されている80年代後期のスロージャムの傑作Rock Me Tonight (For Old Times Sake)という曲。制作はニューヨークを拠点としたハッシュ・プロダクションで、こちらのMVの通り、都会の夜の雰囲気漂うゴージャスなサウンド。この曲の大ヒットによってFreddie Jacksonは一躍スターとなった。このほか、アルバムの大半を手掛けたBarry EastmondによるLove Is Just A Touch Awayや、ジェントルな雰囲気のバラードYou're My Ladyも良い。80年代ブラック・コンテンポラリーの黄金期を象徴する一枚。
Tuesday, February 18, 2025
Giorge Pettus - Same (1987)
Giorge Pettusの87年の1stアルバム。ハッシュ・サウンドの影響を強く受けた都会的なブラック・コンテンポラリーの隠れた名盤。洗練されたプロダクションと甘美なメロディが際立つ、80年代後半のクワイエット・ストーム系の良質なスロー、ミディアムを多数収録している。1曲目のMy Night For Loveはこの時代でベストと言ってもよいバラードで、個人的にも大好きで5本の指に入る名曲。耳に残る煌びやかなイントロに始まり、ドラマティックに展開する円熟したサウンドを聴かせてくれる。2曲目のCan You Waitや6曲目のYou're Perfectの奥深いヴォーカルも素晴らしい。
Sunday, February 16, 2025
James Robinson - Guilty (1987)
Changeのボーカルとして活躍した実力派ソウルシンガーJames Robinsonの87年作。パワフルなシャウトも交えながら、繊細なヴォーカルコントロールで、バラードも甘く情熱的に歌い上げる。Change時代に引き続き、Barry Eastmondが多くの曲で鍵盤を担当するほか、ハッシュ録音に多く関わったギタリストのFareed(Najeeの兄弟)がプロデュースを担い、アルバム全体で煌びやかなNYサウンドが聴ける。1曲目のスロー、Can We Do It Againは圧巻の出来で、そこから5曲目のSeems So Long(Stevie Wonderカバー!)までのバラード曲の流れが素晴らしい。アーバンなミディアムナンバーA Kind Of Loveもイントロから完璧。
Wednesday, February 12, 2025
Change - Sharing Your Love (1982)
イタリア出身のファンク/ディスコユニットChangeによる80年代NYサウンドの定番。アメリカのファンクバンドに比べると、美メロが前面に押し出されていて、タイトなグルーヴに乗せたお洒落なサウンドが満載。リバーブの効いたさりげないギターのカッティングや電子音など、音の空間的な広がりがリズムに柔らかいニュアンスを加えている。リードヴォーカルを担うJames Robinsonの声も相性抜群。1曲目のThe Very Best In Youは彼らならではのサウンドが存分に感じられる本作のベストナンバーだが、個人的には4曲目のPromise Your Loveの静かな中での煌びやかさもお気に入り。
Saturday, February 8, 2025
The Whispers - Same (1979)
ディスコブームの終焉とともに80'sダンスフロア向けのサウンドへの転換を図ったThe Whispersの79年作。このグループの魅力は、双子のスコット兄弟による息ぴったりの安定感をもったツインリード。小柄でチャーミングなスコット兄弟がステージの両サイドに立ち、中央で華麗にステップを踊る高身長のメンバーがステージ映えするフォーメーション。癖のない明るいヴォーカルが、SOLARレーベルの有力サウンド・クリエイターLeon Sylvers IIIのポップセンスと調和したのが、5曲目のAnd The Beat Goes Onという一曲。Welcome Into My Dreamのようなバラード曲で見せる甘いボーカルも彼らの持ち味。